野口整体の見方 熱は下げない

【野口整体の見方 熱は下げない】

「傷は消毒しない方がいい」を見つけたのはお医者さんですが、野口晴哉先生は、もう何十年も前から、そういう常識になっていることに真っ向から異を唱えていました。

その一つが「熱は下げるな」という考え方です。

これに関しても、最近ではお医者さんもやたらに熱を下げるものではないですよと言ったり書いたりしています。

ですが、野口先生が「風邪の効用」(現在ではちくま文庫で復刻出版されています)の中で「熱は下げちゃダメ」と書かれていますが、この本が出版されたのが1962年です。59年前ですね。私が一歳のときです(笑)

本になる前から実践されていたわけですから、60年から70年前にはすでに「熱は下げちゃダメ」と提唱されていたわけです。

でもまだまだ一般的な常識としては、熱が上がると病気だ、上がった熱は下げなきゃいけないということが金科玉条のように言われます。熱が下がってたら良くなったような気がする。熱が上がってる間は病気だというような感じです。

今では知られてきましたが、熱が上がると免疫が活発になります。熱が上がりきらないと、免疫が活発にならないからかえってその時に感染しているものがのさばるのを長期間助けることになってしまう。

発熱の中枢というのは後頭部にあります。脳の構造をめちゃくちゃ大雑把に説明すると、後頭部に近いほど原始的な脳で生命維持に関係が深い。前頭部に行くほど考える方で生命維持との関係は薄い。あくまでも直接的な関係で言うとそうなります。

その昔昭和の時代劇ドラマで必殺仕掛人というのがあって、名優・緒形拳さん演じる是枝梅庵さんという仕掛け人が、長い針を持って悪党の後頭部をぷすっと刺す。それで悪党は即死します。つまり後頭部はそれだけ命との関わりが深いということです。

時代が変わって高倉健主演、武田鉄矢と桃井かおり助演で北海道が舞台になった「幸せの黄色いハンカチ」という山田洋次監督の映画がありました。

健さんは刑務所から出所して、奥さんが待つ家に帰るかどうか悩んでるところに、桃井かおりが一緒になって奥さん絶対待ってるから帰ろうよと言い、武田鉄矢さんを運転手に自宅に戻ると、、、というような物語です。

それで、何でこの高倉健が刑務所に入ることになったかというと、これは任侠ドラマではありませんので、長ドスを持って殴り込んで人を殺したわけではありません。

奥さんである倍賞千恵子さんが妊娠して万々歳だった。健さんは喜んで家の庭に大きい旗竿を立てて、「子供が生まれたらここにこいのぼりを泳がすんだ」と、ものすごく楽しみにしていたら、残念なことに生活が苦しかったからか、倍賞さんが無理をして流産してしまったんですね。

それでやけ酒を飲んだ健さんが、チンピラと肩がぶつかってダンと突飛ばしたら、チンピラが倒れて後頭部を歩道の石かコンクリかの角でぶつけた。それで死んでしまって、健さんは犯罪者になって懲役刑です。

これが前頭部だったらたんこぶですみました。後頭部だったから人生を棒に振る話になりました。

つまり、それだけ後頭部というところは生命維持と関係が深いということです。ぶつけただけで死んでしまう可能性があるぐらい、ある意味「効き目」があるところなのだから、そこを応援してやればいいじゃないかと考えるのです。それで野口整体では発熱時には後頭部に手当します。これがまた意表を突きます。(つづく)

 

生活整体研究家
進化体操と和の体育

津田啓史 拝