津田が遠隔治療をしないのは

【津田が遠隔治療をしないのは】

お盆休みの話ですが、毎年秋に身体表現の講師を務める大阪府立東住吉高校の3年生の卒業発表会に行きました。東住吉高校芸能文化科で身体表現ワクの中で5週間「整体・身体の整え方と表現」というような内容を教えていて、今年の秋で12年か13年目になります。

卒業発表会はだいたい金曜日土曜日で仕事で行けず、昨年都合をつけて初めて行ってみてびっくりしました。1年生のときのあの「面白がるけれども集中が数分も続かない」「かわいいけど、頼りない子どもたち」が、実に生き生きと琴に三味線、能・狂言・長唄・日舞・落語・演劇・動画などを演じている。

一年の秋冬から1年半でここまで伸びるか!うーん、ここまで伸びる素材だということを全く理解できてなかったな、すごいな、刺激になるな、これは毎年来ないとなというのが初めて見に行った昨年でした。

とても感動したので、今年もすべての出し物別にその場で感想を書くことにしました。出し物ごとにプログラムの1ページが割かれているので、そこにメモに書いたものを貼り付けていきます。

演じた側にすれば、自分がどうだったかの評価ぐらい気になるものはない。私が担当する授業の時には毎回感想を提出させているので、こちらも書かないではバランスを欠くというものです。

コロナ禍で席数は半分。換気条件をよくするために舞台装置を変える時も幕は上げたまま。わたくしたち講師陣は舞台を見下ろす照明さんの入る上の方のスペースに間隔をあけて座ります。見ながら感じたままをポストイットに書いて、そのままプログラムに貼り付けていきます。

時には暗転のときもあるので、闇の中でも書かないと間に合わない。舞台を見たまま手元を見ないで書くこともあります。「文字を書く」という行為はけっこう身体が覚えているようで、手元を見ないでもそれなりに読める字が多かったのですが、たとえば行が歪んで、上の行に重なって文字がダブることはありました。

単独の文字(形)は取れても、行(位置)という周りとの関係で成り立つ部分は成立しないということですね。

今年も非常によかったです。今年の「学校」は、全国的に3月から長期間の休業。芸能文化科というのは、上の学年に行くほど、各種芸能のお師匠さんに少人数で対面で稽古をつけてもらってものにしていくというものです。それが、一学期の前半はお休みだし、始まってからも分散登校だったりしたそうです。よくもまあ悪条件の中ここまで仕上げた生徒諸君でありましたし、その地力をつけさせた2年次の先生方でしたし、本番に間に合わせた3年生の先生方もすごいな。

私の授業は11月から。たぶん「濃厚接触できない条件」をどう工夫して、整体するというテーマで二年次三年次の先生方に負けない授業ができるかと今から思いめぐらす津田だったのでした。

ここで話題は変わって、ヒーリングや整体の世界に「遠隔治療」というものがあります。離れたところにいる人に氣?を送り治療するというものですが、私はできません。たぶん。本格的にやろうとしませんし。

対面した人なら手だけでなく、肩でも足でも触れていれば人をとろかせることはできます。畳を通して離れた人をとろかすこともできるし、氣の通りやすい人、場ができている時は目で見るだけでも人をとろかせることはできます。できますがあくまでも講習会という場があり、肯定的な参加者が集まり、こちらを信頼しているという関係性があるから可能だというだけの話です。

【動画】視線の同調でとろける整体をかけてみる つながってとろける

相手の反応が始まって、これでいいと感じ、相手の反応が小さいとあれこれ工夫したり、感度を変えたり、速度感を切り替えたりすることでとろけるようにします。そうやって相手の状況に応じて微調整することでその「整体」を続けたり進めたり終わったりすることができる。

遠隔にはそれがない。手元を見ないで文字を書くようなものと同じ難しさを感じます。だから自信をもって「遠隔ができる」という人はすごいと思う。相手の反応に応じて、という部分がなしにやれてしまうというのが私の理解の範疇を超えています。でも結構な数の人がさらりとできるとかやったとか言われる。野口先生も頼まれたからブラジルに氣を送ったとか書かれている。

私にはその回路はないからたぶんこれからもやらないだろうな。

あくまでも私の感覚です。今目の前で手の内で起こっていることを見て、感じて、微調整しているからできる。何をやっているかを見ながら微調整していくからやれる。つまり、上に書いた発表会で手元が見えないで字を書いていると短時間なら書けても、一度手の位置をメモから外すと、どこに字を書いていいかわからない。ずれてもわからない。修正のしようがない。だから見ながら書かないと無理。

私は自分をあまり信用していないので、刻々と状況の変化を見ながら修正微調整する整体でないと怖くてできません。それをこれからもやります。講座もその方針で進めます。

もしもコロナ明けに整体を学びたいと思われる方がおられたら、そういう方針のところに行くんだと思っていただいたら、とてもうれしいです。

 

進化体操と和の体育
津田啓史(つだひろふみ) 拝