ある災害救援仲間のご親戚の悲惨な実話

【ある災害救援仲間のご親戚の悲惨な実話】

私は和歌山に引っ越す前は、兵庫県伊丹市に住んでいました。JRの伊丹駅に近いところで、少し小高いところに建っており、6階でしたが実質8階を超えるぐらいの高さの部屋で、東の窓からは大阪国際空港=伊丹空港がまるまま見えました。

阪神大震災の何年か前に大雨が降り、浸水家屋が出た水害がありました。忘れていましたが、人に「あったでしょ」と言われるとそういえば確か空港も結構冠水した大雨とかあったなと思いだしました。なんせ高いマンションですからついぞ浸水の心配をしたことがない。それにしても大騒ぎになれば覚えていそうなものですが、記憶がその程度ですからひどい被害を受けたのは限られた地域の少ない家屋だけだったでしょうね。もちろんそのころは水害だからボランティアで出動しなきゃというような文化はありませんでした。(そういうのが文化になるのは阪神大震災以後でした)

ボランティア仲間の親戚の方、Aさんとしておきますね。Aさん宅は伊丹市で、上に書いたその水害で浸水しました。水害にあった後のおうちは何を気をつけたらいいかなどの知識もなく、そういうことを注意喚起する行政からの情報もなく、推定ですが家の周りの泥とか目立つところの泥ぐらいを片付けてそのまま住んでいました。

水害の後、というのは床下や壁の中の、泥や水を完全に取り除いたり乾燥させないとあとあとに住めなくなるぐらい大きな影響が出る場合があるのですが、そんなことは全く知る由もなく。

結局どこかに水気がたくさん残っていたのでしょう。毎月毎月どんどん家が傷み、腐り、到底住めない家になってしまいました。こんな水害に合うような土地なんてと思われたのか、伊丹市は引き払って神戸に新居を新築しました。そして引っ越し。

とりあえず荷物だけは入れましたという引っ越し作業のみ終わって、行政の手続きやご近所へのあいさつは明日となりました。そして明けた翌日の早朝に、、、、阪神大震災が起こったのです。新居には一日寝ただけで全壊です。住民票もまだ移していません。それが悲劇を呼びました。

避難所に行っても「あんたはどこの住人だ、そんな人住んでなかったぞ」とよそ者扱い。義援金か見舞金などを受け取りにいってもそもそも住民票を移す前だったので詐欺扱い。たまたまご近所でかろうじて顔見知りになった人がいて説明してくれたとかで、なんとかなったとか。

水害も地震も不運というしかなく、避けられません。(生命が助かったと考えればそこには幸運もあったかもしれませんね)ただし、この一連の不運の中で避けられたことが一つありました。水害のあとの処理だけは、知識かアドバイスをする人があったりしたら、避けられていました。そうすれば、その家に早々に住めなくなることもなく、神戸に引っ越しをすることにもならなかったでしょう。

水害の後どういう処理をしたらいいのか、ということの専門業者なんていませんし、行政にも細かいノウハウはありません。(よほど担当者の意識が高く他県などの現場に何度も赴き、リアルに準備していないとまず無理。)結果的に災害の度にかけつける災害救援のNPOのメンバーがもっとも知識を持ち、ノウハウを知っています。

新しい家だと、水害にあっても見た目はきれいです。ところが新しい家ほど断熱材として壁の中に防火にもなる綿のようなものがぎっしり入った壁材が使われています。これなんか水害の後1カ月以上たってから詳しい人が入って「もしそれが濡れていたらあとあとえらいことになりますから調べてみましょう」と壁をはがして調べてみたら、まだぜんぜんぐっちょり濡れていた、なんてことはざらにあるのです。

見た目がきれいだと思ってそのまま住んでいたら、気が付いたら床下が腐っていたり、家じゅうにカビが生えたり。そんな現状はどこでも同じなので、災害救援のNPOは駆けつけざるを得ないのです。

「行政は何をしているのだ」というご批判もあるでしょうが、今時人もお金も余裕のある自治体なんていうのはまずありませんから自然災害のようにいつ何があるかわからないことに万全に準備なんて期待する方が間違っています。無い袖は振れません。限界があります。なので、ノウハウを持っているNPOやべテランボランティアが加わる方が住民にとってプラスになることが多いのです。

といっても、それらNPOは、たまたま裕福で自腹で活動できる人でなければ何らかの助成金や善意のみなさんの寄付金などで運営されています。つまり「民間資金」に支えられているわけです。私の経験から公的(国や行政)からの支援はほぼないと言ってもいいと思います。(国や行政は事前に予算を組んで執行するという仕組みで、勝手に使えず暴走しないようにできていますから仕方がない)

一方で国や自治体というのは、国民を等しく健康で文化的な生活ができるようにする憲法上の義務を負っています。災害にあった人を野垂れ死にさせてはいけないのです。だから本来国や自治体がやるべきことを、見過ごしにできないひどい現状があるから、災害NPO、そして善意のボランティアのみなさんがやむなく活動しています。

「大規模災害にはボランティアが必須不可欠」だと言っていた、骨の髄まで勘違い野郎の防災担当の大臣がいました。ボランティアが行くのはいいんですよ。自分の意志ですから。でも本来は国が面倒を見るべき被災者の生活や被災地の復興を、国の側がボランティアを計画に組み込む、というのが勘違いの大馬鹿野郎だと言っているのです。組み込むなら交通費や費用負担とセットでなければ筋が通りません。

お金の支援も人的な支援も一切行わないで、ボランティアが足りないなどと、本来担当者であるべき国の大臣が言うのがバカだと言っているのです。現場も仕組みもわかっていないとしか思えない。周りの賢い官僚も本当のところがわかっていないのか、その方がお金出さないでいいから間違っているけどそんな間抜けな大臣の発言を止めないのか、勘違い発言がダダ洩れしているというのが現状ですから、事態がまともに改善されるという予想は当分たちません。

本当は日曜日の災害防災の投稿ですが、明日の日曜日の午前中に津田が理事をしている団体(レスキューアシスト)の代表、中島武志、武ちゃんがNHKの「明日へ」に取り上げられるので一日繰り上げて土曜日ですが投稿します。

よかったら明日日曜日午前10時5分、NHK「明日へつなげよう」ご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/ashita/bangumi/

番組の予告では「最近の大規模災害はボランティア頼みではすむレベルではない」みたいなことが書いてありましたが、たぶん上に書いたような踏み込んだことは盛り込まれないと思うので、思わず言葉が悪くなりましたが書き足してしまいました。

ちなみに、津田は取材時に全然かかわっていないのでかけらも出てきません。

 

命あってこその整体だから、
まず防災を呼びかける整体師

津田啓史