野口整体の見方 熱は下げない 2
【野口整体の見方 熱は下げない 2】
野口整体の発熱のお話に戻ります。後頭部というところは生命維持と関係が深い。一方、生きている人間は温かい。死んだら冷たくなる。つまり発熱するということは人間が「生きよう生きよう」としている証左なわけです。だったら、発熱している時は発熱に協力してやればいいじゃないかというのが野口先生の考えです。
風邪をひいたらおでこを冷やしますが、野口整体の手当というのは真逆なのです。後頭部を温めるというのがその手当です。
風邪をひいて熱が出たら、蒸しタオルを作って折りたたんで熱々(あつあつ)を取り替えながら、後頭部を40分温める。そうするとますます発熱する。一気に熱が上がって、そして多分その間に一気に免疫が感染した細菌を叩くのでしょうね。一気に熱が上がって汗がどっと出て熱が下がる。
というようなノウハウを1962年、昭和37年に発行した風邪の効用の中で既に展開しておられたわけです。
熱が上がると、免疫が活発になるということ自体はその後に明らかになってきます。ただそのメカニズムというものが明らかになっていなかったのが、2012年に大阪大学の研究で明らかになりました。
白血球の中に好中球というのがあります。血液の中に有害な微生物=細菌が入ってきたらぱくっと食ってしまいます。ただし、好中球の中に取り込んだだけではケリがつきません。消化しないといけない。
そこで活性酸素を放出して微生物をやっつける。活性酸素の身近な例としてはオキシドールがあります。傷口に塗ると泡がじわじわと出る。この泡が活性酸素で、これで細胞の覆っている膜(実際は細胞壁ですが)はちょわっと溶けて、お陀仏になります。
ところが、活性酸素というのはそれだけ危険ですから、身体にしたって何もないときの身体の中に活性酸素を撒き散らすわけにはいかない。いざという時だけ放出する。
それで、好中球の中にそのバルブがあるわけです。水素イオンチャンネルというらしい。で、微生物を食べてしまったときにそのバルブを開けて活性酸素をがっと注ぎ込む。
このバルブのふたになっているものが、タンパク質でできた紐で、これが普段はよじれた状態になって蓋をしています。人間の熱が上がるとこのタンパク質のよじれた紐がまっすぐになる。そうすると隙間が開いて、その開いた隙間から活性酸素がどばどばと出てくる。これで有害な微生物をやっつける。
このバルブの蓋になっているタンパク質の紐がよじれほどけてくるのが体温でいうと37度。37度を超えてくるとこれが開いてくる。体温が上がれば上がるほどどんどん開くんでしょうね。そういう細かいメカニズムが大阪大学の研究でわかりました。
ちなみに、野口先生は熱が出ている間は身体が活発なのだから無理はしないまでも神経質に安静にしている必要はない、ということを言われます。
ただし、熱をガンガンに出した後、いったん下がって半日ほどたつと一度平熱以下に下がるから、平熱以下に下がった熱が平熱に戻る時期というのは安静にするべきだということをセットで提唱されています。
この時期に無理をすると、すっきりと整わずにだらだらと不調が続く。
私自身はめったに風邪をひかないし、熱も出ないのでなかなか自分で実験ができないのですが、整体に通われている方でちゃんと熱の経過を計った方は「確かに平熱以下に下がりました」と言われています。
熱をむやみに下げるなというのは、未だ常識にはなっていませんが、お医者さんが発信し始めているのは前よりも見ます。ここまで野口先生の「風邪の効用」から数えて60年ぐらいかかっています。
平熱以下を安静にしようというのが一般に普及するまで、あと何十年かかるのでしょうね。
生活整体研究家
進化体操と和の体育
津田啓史 拝