行動は情報への反射だから
【行動は情報への反射だから】
7月26日の結び『児玉先生みたいな提言をする方がいる一方で「GO TO トラベル」みたいな「助かる人がいるのは分かるけど、少なくとも今ではないでしょ、」としか思えない政策が実行されます。同じ問題でも、人はどうしてこんなにも違う対応するんでしょうか』の続きです。
和の体育は「もともとどうなっているの?」という物差しで常に考えようとしています。
この一文の読者のみなさんは「スポーツの上達」「疲労の回復」「整体の上達」もしかしたら「ビジネスの成功」などいろいろな目的で読まれている人がおられると思います。一見バラバラなようで、結局のところそれは「行為・行動を変える」ということに集約されます。
スポーツや整体の下手な動きをいい動きに変えたい、疲れる身体の使い方を疲れない身体の使い方に変えたい、失敗する仕事上の行動を成功率の高い仕事上の行動に置き換えていきたい、とこういうことになります。
なので、正解になるいい動きというものがあり、それを繰り返す、近づくというような枠組みで改善しようと思われるのではないでしょうか。でも、そこに見落としがあると思うのです。
行動というのは、行為が集まったもの、行為というのは動作の集まったものとかなり荒っぽく定義します。そうすると、行動というのは動作の集まりです。行動を変えたければ動作って何?ということになります。
動作というものは、なんとなく「意思の反映」という感じがしますが、実際には対象に対する反射がほとんどです。より正確にいえば「対象からの情報に対しての無意識な反射」というものが根っこにあります。
熱いと手を引っ込める、暑いと汗をだす、おいしそうだとよだれをたらし、別嬪さんだと鼻の下を伸ばす。
チャップリンのモダンタイムスの工場労働者のようなもう、機械の一部と化して他のことは一切やれない、という状況でもなければ、私たちは結構瞬間瞬間に次の行動の選択の自由はあるものとして考えます。
そうすると「私は何をすればいいのか」と「考える」よりも、「私から望ましい行為行動が出てくる何の情報に反射していけばいいのか」ととらえた方が行動は変わってきそうです。
人は同じ景色を見ていても、そこで見ているものは人によって恐ろしく違います。だからもめるんだろうと思いますが。
家内が妊娠しているころ、街を歩くと妊婦さんがやたら目につき、長男が誕生すると街中で赤ちゃんが目に飛び込んでくるようになりました。父が亡くなったあと半年ぐらいは、同じぐらいの背格好の高齢者がいると目に飛び込んでくるようになりました。
人は目を閉じて「赤!」と言ってから目を開けると、瞬間に視野の中にある赤いものを視線でとらえます。色でも形でも同様です。条件設定して身体に依頼すると検索機能が効いて、ちゃんとフォーカスしてくれるのです。
情報のとらえ方を変えることで未来を変えるというテーマはとても大きいので、まだ研究は始まったばかり。そんな中で、「触覚から情報を得て、のぞむ身体を引き出す方法」を講座の中では採用しています。
例えば「骨盤」という部位が固まって動かないと、全身の動作の連携がうまくいきません。強靭かつ柔軟で自由に動くことが望ましいです。そうすると、骨盤をあれこれ自由に動かそうとします。でも、これだと骨盤さんには何の情報もなく、頭からの命令、強制があるだけです。
ふにゃふにゃに空気を抜いたクッションを骨盤に当てて仰向けになって動くと、体重移動でクッションがふにゃふにゃと変形していきます。すると骨盤はどう変形していくかという情報をより正確に得ようとして、硬直を減らし、柔軟になってその変形を追いかけようとします。その原理を応用しているのがLPC(低圧クッション)の進化体操です。
今日紹介する動画は、背骨の柔軟性を高めるトレーニングです。パイプガードという商品名でホームセンターに売っているくにゃくにゃの樹脂製のパイプを背骨に当てて動かすと、本当に背骨がくにゃくにゃに動きます。パイプガードの正体を、皮ふが探知しようとして、自らを対象に近い柔らかさに変えることで、背中に当たっているものの正体を見極めようとしてしまうのです。
「触覚の体育で背骨がぐにゃぐにゃに」
意志力と根性でひたすら背骨を動かすよりも、よほど簡単に背骨が柔らかくなります。私が私の背骨に命令して柔らかくなれ、というのは個人の中だけのワク組みです。柔らかくなりたいのなら、柔らかいものに当てて触覚に働いてもらって相手の柔らかさをいただくわけです。
これも相手があって生まれる現象です。和の体育の「和」。相手と和する。言い換えれば相手がなければ和することができないのです。自分を変えたければ、自分の中から望ましい反射・行為・行動が出てくるような相手・対象を設定して結び付いていく。対処する情報を変えることで自分を変える。そういう視点も加えてはいかがですかというお話しでした。
冒頭の「GO TO トラベル」のお話に戻ると、見えている情報が違うから行為が違うということですね。仕組み的には「大手の旅行会社が助かる方法」のようです。それがいい、悪いではなく、視界に入ってこない=情報がない、ものには対応できないというお話です。