大阪市廃止賛成の方は読まれない方がいいです

【大阪市廃止賛成の方は読まれない方がいいです】

大阪という町は電車から見ると殺風景です。私は阪急沿線生まれなので、ちょっと西に向かうと六甲山麓、北に向かうと北摂の山麓になって緑がいっぱい。起伏もいっぱい。大阪よりも規模の大きい大都市でも、東京の方が起伏もあるし緑も多い。

仕事の範囲が広がって近鉄・南海に乗るようになって、高架から大阪の街並みを見ると本当に平たい。ほとんど起伏がありません。縄文時代は海でしたからね。

 

【南海トラフ巨大地震 津波】

大阪の中心地であるキタ(大阪駅周辺地域)とミナミ(難波駅周辺地域)の間に大阪市役所があります。下に地下鉄御堂筋線が通り、上に御堂筋が走っております。30年以内に起こる確率が80%と言われている南海トラフ地震で予想される津波で、このエリア商業と行政の中心地区は全部水没が予想されています。松屋町筋より西は全部水の底です。北区も浪速区も最大3メートル前後の浸水が予想されています。

海の方には水門みたいなものもありますが、耐震設計が古い時に作られたものの場合、南海トラフの震度7でゆすぶられたら持たない。閉まらなくなるんじゃないかと予想されているそうです。

海沿いの此花区に津波が来ると最大予測波高は5メートル、港区はほぼ4メートル。この二つの区が「大阪万博」と「カジノ」の建設予定地です。馬鹿ですね。実にスリリングです。カジノの候補地がばくちです。ちなみに「現状の備え」だと予想される南海トラフ巨大地震の大阪市の死亡者は15万人です。京大の防災のトップの先生の発表された数字です。

 

【台風】

上は南海トラフ地震からの予測ですが、一昨年の台風21号の話。予測ではなく実話です。関西空港が浸水し、連絡橋にタンカーが吹き寄せられて、橋がひん曲がった台風の時です。あの時の高潮で天保山で最高潮位4.59メートルでした。ちなみに対策されている潮位は5.2メートルです。なのでわずか60センチぐらいのぎりぎりで助かっただけ、という実績があります。本気で備えるならば最高潮位7.5メートルにそなえる防潮堤がいるそうです。

だから現状の備えのところに5.3メートルの高潮の台風が来たら、大阪市の西半分が水没します。津波でも高潮でも水の底です。なんせ低くて平たいのが大阪市です。とうぜん地下鉄も水没です。

 

【備える】

直下型地震というのは、どの断層が割れるかなんてわかりませんからほぼ予測不能です。ところが南海トラフ地震だけは、過去に100年前後数十年の周期でずっと起こっていることが分かっています。30年以内に80%起こると言われています。この確率というのは、70歳の人があなたは今後30年以内に死ぬというのと大して変わらない確率で起こるということです。絶対に起こるけどいつかわからないというだけです。

何が言いたいかというと、南海トラフに備えるぐらい確実な防災はない、ということです。津波対策と地震対策が進むほど、直下型地震にも高潮にも対策になるでしょう。

直近で起こった南海トラフは「南海地震」で戦後すぐです。この時のはあまりひどくなかった。義理の父は和歌山の広村(現在は湯浅町)で津波から走って逃げた人です。川沿いの道を逃げた人は助からなかったがと言ってました。でもこの時は大阪はやられてない。規模が小さかった。ということは次も小さいにはならない。逆を予想する方が順当でしょう。エネルギーを残している可能性が高い。次の方がもっと大きい可能性を予想する方が普通です。

とにかく大阪が災害に弱いということが言いたい。そして、では東京や名古屋と比較して防災が進んでいるかというと、専門家の意見をきくと進んでいない。地下鉄の入り口に水害の時に水がはいらないような低い板を取り付けるぐらいしか思いあたらない。

 

【都にはならない都構想】

それで11月1日に「都になる保証はまったくない都構想」をうたう住民投票です。二重行政の無駄を省くために、大阪市を廃止して特別区4つに分ける是非を問います。大阪市というのは政令指定都市といって都道府県並みに権利と権限(平たく言えば使えるお金だ)を持っています。これを無くして特別区という、聞こえはいいけど実質は普通の市よりも権限のない(使えるお金が少ない)自治体にします。

現市長によると、大阪は府知事も市長も共に維新が担ってきたので今の大阪には二重行政はないそうです。ないけれども、将来に政党の違う府知事と市長になったらまた二重行政になるからという、訳の分からない理屈で政令指定都市の大阪市を廃止します。四つの村(村レベルかそれ以下にしか権限がない自治体)にします。4つをまたぐ一部事務組合というものもつくりますから三重行政になります。そんな話です。

という表現は私が偏見に満ちて、都構想反対派の言い分をうのみにした間違った情報かもしれません。どうぞご自分でも調べてください。だからもしかしたら、大阪市を廃止して4つの特別区にした方が維新さんが言うように大阪が発展するのかもしれません。

だから「発展」とか「成長」とかではなく「災害」の物差しだけで考えてみます。大阪市を4つに分割するのと、都市計画などに長けた専門家がまだいる大阪市のままでおくのと、どちらが防災や災害が起こった後の復旧に優位かという観点です。絶対に分けない方がうまくいきます。物事が動くか動かないかは最終的に人です。

災害が起こったら、自治体の職員は自分の自治体のこと以外は絶対にしません。できません。そして自治体の規模が大きいほど、レベルの高い専門性のある人間をキープできます。

大阪市を廃止して4つに分けるのに200億かかります。毎年20億のランニングコストがかかります。それで二重行政で解消できる金額について2011年には年間4000億だー!とぶち上げていました。それが2013年になると年間1000億という主張に変わりました。それが年間155億になり、最新では1億~数億に減りました。なんてことが言われていますから、私は反対です。

それで、もしも大阪市を廃止した方がいいという大阪維新の会の主張が長期的な視点では正しかったとしても、膨大な市の職員を4つに分けて、一から首長を選んで議会を作って、円滑に動くようになるまでそんなもの1年や2年でできる話ではありません。なので今回可決されてもスタートは2025年だったはずです。スタートしたって円滑に動くわけないから、そこからどたばたが数年以上かかります。

その間に大規模災害が来たらどうすんのよ。1年数億浮かすために移行に200億のお金を使い、毎年20億使い、どたばたを5年~10年費やすのを止めて、災害対策進めてほしいです。成長も必要ですが壊滅を避けるのも重要だと思います。

今、南海電車で道場に向かっています。和歌山に近い最初の30分は田舎です。農地も起伏もあります。泉佐野あたりから難波まで30分、海沿いの宅地です。関空のある泉佐野以北はまったく家屋が途切れません。すごい数の人が住んでます。ずっと平たいです。低いです。津波でも高潮でもやられる高さです。私が行政の防災担当者なら絶望的な気分になります。助けようがないという気分になります。

私が納得したデータや言説から言えば「大阪市廃止・四分割構想」はほとんどメリットがないように映ります。でも人によっては「これこそが関西が浮上する最大最後最高のチャンスだ」という方もおられるのでしょうね。

私としては、大阪都構想(都にはならない、ただ大阪市を廃止して四つに分けるだけ)を通して、防災の見直しをする機会になり暗澹たる気分になったことをお伝えします。今すぐ始めたって間に合うかどうかわからないのに、、、、

 

命あってこその整体だから、
まず防災を呼びかける整体師

津田啓史