マインド、フルでねえっす その1
【マインド、フルでねえっす その1】
さて昨日「御鉢、どんぶりの中でここしかないという場所にこれしかないという角度で鎮座している天ぷらそばの海老に感動した」という話を書きました。
●さくさくのころもがあってこその天ぷら
その追記談です。含蓄の深くないどうでもいい話です。
私は天ぷらそばの海老が横たわっている、沈んでいるのには常々懐疑的でありました。大学を卒業した後、ヨガの指導員の修行資金をためるのに和食のお店で一年間住み込みで働いていて、天ぷらなども揚げさせてもらえましたので「からっと揚がった天ぷら」には敬意を持ちます。(なかなかうまくいかなかったので)
からっと揚がった天ぷらというのは、いうなれば糊のきいた浴衣、アイロンの行き届いたワイシャツのようなものです。その晴れ姿を食べる人に見てもらうこともなく、いきなり出汁にドボンとつけるのは理不尽だとかねがね思っていたのです。
天ぷらたるもの「素材+ころも」で生まれたのがその味です。ところが最初から出汁に沈んでいると、サクサクのころもとはついぞ出会えない。「このそばは出汁がうまいぞ、まずは出汁だけ一口、二口」「お、このそばは、麺もうまいぞ、味わいながら一口二口」と天ぷら「以外」に集中してしまうと、たちまちにしてそのころもはふやけ、ふくらみ、弱体化して、箸をつけるとたちまちにして破け、脱げ、海老だけをつまむことになる。
これが残念でならない。
筆者は、かくなる天ぷらそばにおける海老天の哲学、こだわり、主張をかねてから持ち合わせていたので、全面的に出汁に沈めることなく、頭部は出汁に、尾っぽは外に、しかもその海老には何とも言えない筋の通った感覚があった、というわたつね三代目Nさんの天ぷらそばとは極めて相性がよかった、ということはあるかもしれない。
●マインドフルネス
さて標題はもちろん「マインドフルネス」なるものをもじっている。マインドフルネスを調べてみると、一言で言えば「今、この瞬間に全集中せよ」ということらしい。そしてそのトレーニングとして瞑想を用いることが多いという。
読者のみなさんに気を付けていただきたいが、筆者の立ち位置はどうも「尊王攘夷」のころの志士のごとき偏狭さに満ち溢れている。特に東洋的なものが西洋で流行ったのち逆輸入されてきたようなものは、肯定的なまなざしを送ることはほぼない。徹底的に忌み嫌う。以上はわきまえておいて適当に加減されるがよかろうかと思う。
さてマインドフルネス「的」なメンタルケア的・瞑想的ワークショップなどでは、視聴覚味覚を動員して、「今、ここに集中」体験を促すという。ある人が「干しブドウを使う」というのがあると教えてくれた。ちっぽけな粒を見て、香りをかぎ、噛み、味わい、と普段よりも濃密に密接にかかわりあい、気づきをシェアしあったりする。
などという話を聞くと、「けっ!」と思う。かかるセミナーの講師が干しブドウに向き合う集中度よりも、筆者が天ぷらそばに向き合う向き合い度の方が数段上であろうと言いたい。普段気にも留めない干しブドウから支持されて多くの気づきを引き出そうとする行為と、だれに指導されたわけでもなく、ただの海老に全身で感動し味わう筆者の行動の方が、その他の場面でも同様の全集中の反射を引き出す可能性ははるかに高いと推察される。
●天ぷらそばの奥は深い
などなどいささかうぬぼれていた筆者であるが、そうでもなかった。筆者はなかなか「サクサクのころも」にこだわりすぎであったのだ。
わたつね店主Nさんによれば、「天ぷらそばは、出来たてとその後では違う料理である」のであった。デビューすぐは確かに「サクサクころもの天ぷらとお蕎麦」ではあるが、その油が溶け出した天ぷらそばは別ものであり、麺が減り、ころもがはがれてつゆに溶け出したそれはまた別ものなのである。
サクサクのころものみに注意を払っている筆者はまだまだだったのだ。作り手はサクサクからどろどろまで、天ぷらそばの起承転結を思い浮かべて作っていたのだった。
ということで、今後の筆者は、天ぷらそばだけでも、実にマインドフルネスできるなーと楽しみにしているところである。これを「麺たるトレーニング」と称す。数千円~数万円(推定)の「マインドフルネスセミナー」でその時だけ干しブドウに関心を持つよりも、800円台のお蕎麦でもなんでも全集中できる方が実は実があると思うのである。わたつねに行けるのはせいぜい隔週だから、西中島南方の中華「あずま家」のサンラータンメンでも修行を誓う筆者である。
ただ、そういう集中できる私と出会うというきっかけは必要。その続きは明日に。そんなことにもつながっていくマイクロストレッチです。
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