⑮何もわかってないじゃないか

生活総合ヨガはすごいし、教室に長年年通われている生徒さんは確実に調子は良くなっている人の方が多い。みなさんのヨガ教室やヨガを取り入れた生活への満足度も高い。それが私の所属していたヨガ団体の実際でした。

でも、私は、ヨガがなによりも人間の潜在能力を引き出すのによさそうだと思って、就職先としてヨガの世界に入ったのです。思い入れが強い。だから、ヨガが何よりもいいものであってほしいという熱望があったのですね。

ふだんのヨガ教室のカリキュラムはすべて師匠が組み立てられます。師匠は都会におけるヨガ教室の草分けのような方でしたから、ことあるごとにヨガはすごいのだよ、すばらしいものなのだよ、その価値を十分に認識して教室にいくのだよということを繰り返し説かれました。

でもこちらは内心「はい、それはわかりますが、最近はストレッチというほぼ同じものが出回ってますけど」などと思っていました。

生活総合ヨガはすごいけど、教室ヨガはストレッチと基本はあまり変わらない。といっても、師匠が何年も工夫して独自にかなりアレンジされているもので、シンプルなストレッチよりはよほどいいけれども、それは本来インドでやっていたものではないわけです。いいものであるのは確かだけれど、それ、産地とはだいぶん変わってますけどいいんでしょうか、なんてことも思っていました。

師匠がどうこうという話ではないですね。これは私自身の話です。経験を積むほど、団体の中で偉くなればなるほど、自分は何もわかってないじゃないかということが分かってくるのです。

ヨガのポーズごとに、さまざまな効果がうたわれているわけです。中には似たポーズも多い。同じ反る系統のポーズで、上半身を反らしたポーズは「ノイローゼ治し」で足首を持って反ると「美容にいい」になって、ブリッジで反ると「便秘に効果あり」となります。どこでその差が出るのか説明がつきません。

ヨガのアサナが何千種類もあるのは、ありとあらゆる人のありとあらゆる状況を改善するためにあるのだとうたっても、どのポーズがその人にいいかどうかなんて「私には」わかりません。

どのポーズがいいかが分かったとしても、何秒させるのがいいかなんてこともわかりません。薬だってなんだって適量というものがあります。多すぎれば薬でも毒になるでしょうし、少なすぎれば効きません。

ものすごく効く薬であればあるほど、用法容量みたいなものは厳密であるはずです。

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