笑顔の研究 9 最終回

新大阪健康道場は、大阪府の緊急事態宣言を受けて、現在休業中です。

今週の火曜日あたりから実験的に開けてみて、3月ごろから以前のスケジュールに戻す予定にしています。

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「笑顔の研究 9 最終回」

●人は見た目に騙されます。

口というとどうしても唇という縁取りのある「下あごエリアにある伸縮する穴」の方に注目して今います。だから美容的観点から「口角を上げる」などと言います。つまり「唇の造形」を問題にしています。

ファッションやら美容やらにうつつを抜かしていられるのは、人間が作った社会がおおむね安全で安心なおかげです。もしももっと生存競争の厳しい原初・原始の時代であれば、危機回避能力や戦闘能力こそが重視されたはずで、この原稿もそういう「もともとはどうだったか」を合わせて考えましょうよ、という視点です。

話は戻ります。口の輪郭はあごの骨格よりもはるかに小さいのです。だから唇の形状を「口」だと思っていると、それは最重要関節の一つである顎関節による下あごの運動とずれてしまうということです。

推論ですが、現状での結論を言います。笑顔というものが潜在的運動性能を上げるわけではなく、「がぶっと噛みつきにいくような口に先導された動作」を発動するのに、もっとも近いポジションが笑顔だった、という推理です。

なぜなら、噛みつきに行くという動作を想定すると、そこには常に全身の全力運動というものがセットで存在していたと考えられるからです。

「一気にジャンプして喉笛に食らいつく狼」みたいな様を想像していただければいいかと思います。

 

●ちょっと脱線 武道の気合仮説

そう考えると武道の「気合い」というものももしかしたらずれている部分があるかもしれないな、なんてことも思いつきました。

気合としての「ヤー!」とか「エイ!」とかは、明らかに「噛みつきに行く口の形」に開きます。そういう意味では全身運動、全身連動運動、全力発揮運動とは相性が良さそうだと思われます。

ただ「もしかしたら違うかもしれない」と思ったというのは、武道の気合というのは技の「極め」の瞬間に出し、多くの場合はそこで身体に硬く力を入れます。悪く言えば固まります。野生生物の戦いの場面を想定するならば、いついかなる時でも固まるというのは良くありません。

なので本当の気合いというのは「エイ!」と切るのではなく「エイ―――――」っと噛みつくような口を維持していくものであった、という仮説です。犬が戦闘状態のときに「うー」とうなるようなものですね。もちろん犬は「うー」という時も裂けた口の形状は維持されています。人間のように唇を丸めて「うー」とうなっていませんから。口の形だけで言えば「エイ」の「いー」か「ヤア」の「あー」のような開口系です。

だから戦いのときに、いつでも噛みつきに行けますよ、という身体の状態として「いー」とうなりながら構えるというのは、案外理にかなっているのではないかと推察しています。短期の実験はしましたが、長期間にわたる比較検証はしていないので、今後も注視していきたいと思います。

 

●まとめ

ただいまの結論としては「身体の総合力の発揮」という意味では「笑顔よりも、一気に噛みつきにいける、口の横幅一杯に外に開いた噛みつきスタンバイのような状態の方がいいのではないか仮説」です。

笑顔の研究の連載は、いったんここで終了です。ここまでの仮説にもとづいて「整体」や「マイクロストレッチ」や「進化体操」など人や自分の調整やトレーニングの際に、もっとも適切効果的な口の在り方をさらに深めていきたいと思います。

興味のある方は、3月から再開予定の火曜日・土曜日の90分、180分の定期クラスなどへどうぞ。

 

「もともとそうなっていた」に戻ること、もともとそうなっていたように使うこと。
それも整体の目指すものです。

生活整体研究家

津田啓史