㊳好きこそものの上手なれとは言うけれど

素質のある分野というのは、努力するぞというような決心がいらない分野のことなのだと思います。好きこそものの上手なれといいますが、好きなことをするのに、いちいち自分を鼓舞したり励ましたりしません。頼まれないでも没頭してやる、というのがおそらく素質のある分野に対しての自然な取り組み方なのでしょうね。

そういう意味では頑張っていないのです。頑張らなくてもできてしまう。逆に才能や素質のない分野の物事は、頑張らないとできない。ところが頑張ってやったものというのは、自然に取り組んでできていくものとは異質なのです。頑張るという言葉のニュアンスにはどこか「無理を押して」というニュアンスがあります。無理しないとできないことは、出来上がっても無理をして出来上がったものなのです。

ところが自分をかえりみると、その頑張ってやることさえできないのです。鼓舞しても励ましても計画立ててもその頑張りが続かないのです。なので、私の場合は頑張ってもがんばらなくてもことが進みません。

やむを得ず、本当に背に腹は代えられないので「頑張れない人間が、頑張る=無理をしないでも、必要な質と量の準備や稽古やトレーニングや研究ができる方法」というものと、取り組まざるを得なかったのです。

でも、自分がそこまで怠け者で素質がないということと正面から向き合ったのは、河野先生のところから独立して完全に自分ひとりでやるようになってからです。いつまでたっても食えるようにならない。習いに来る人が増えない。結果につながらない。そんな現実を突きつけられた結果の路線変更です。路線変更と言うよりは、一から線路や道路を作るところから始めないと、にっちもさっちもいかなかったというのが事実に近いと思います。

というのは、私の専門分野に関する話で、河野先生から学ばせていただいたものは、本当に今につながる素晴らしいものがもう山盛りでありました。

そこの部分は、書いても理解できづらい専門的な内容を大量に含みますので、ここでは割愛させていただきます。でもどうしても書いておきたいのは、その取り組み方の姿勢の話です。ここはみなさんにも参考になる、参考にしてほしい話です。