球磨川水害の規模と今

【球磨川水害の規模と今】

ニュースというのが目を引く場面が断片的に切り取って流れます。なかなか全体像がわかりません。Yahoo!などで調べられる範囲でまとめてみました。

私が関係しているレスキューアシストが主として活動しているのが八代市坂本町。そこから数回二時間かけて遠征していったのが人吉市。私がもっとも古くからお付き合いのあるオープンジャパンが入っているのが球磨村です。まず球磨川とその流域の町や村のことを聞いてください。

今回大規模な氾濫を起こしたのが熊本県を流れる球磨川。日本三大急流に数えられます。南アルプスから駿河湾にそそぐ富士川。芭蕉が「五月雨を集めて速し」と詠んだ最上川。そして球磨川です。

私は趣味でカヌーの川下りをやっていたので、「下るのにとてもいい川」としてカヌー雑誌でよく見ていました。実際に今も「ラフティング」といって急流をゴムボードでスリル満点に下る、というレジャーのフィールドにもなっていました。

ふだんでも急流です。なんでもない川でも決壊氾濫する時は流れは急になります。もともと急流の川が、規格外の水害になった時の水流の恐ろしさは尋常ではなかったと思います。この球磨川の長さが120キロあります。

球磨川の120キロというのは、大阪を起点に考えると兵庫県をまるまる横切って岡山の備前市ぐらいです。東京を起点に新幹線の距離で見るとと熱海までが104キロ。三島まで139キロですから、東京から熱海と三島の間ぐらいまでの長さが球磨川です。その流域に降った雨。ところによったら、累積雨量500ミリレベルの雨を流域の山からじょうごや漏斗のように球磨川に集めた結果起こったのが今回の水害です。

地理関係を見てください。

八代市
坂本町
球磨村   朝霧町
人吉市 錦町

球磨川河口が八代市です。八代市南部に阪本町があり、ここにレスキューアシスト熊本が入っています。南隣の球磨村にはオープンジャパンです。内陸部の盆地に人吉市があります。八代市役所から人吉市役所までが40キロです。錦町、あさぎり町とあと60キロ70キロと川は続きます。

今回、その120キロ弱の流域のうちなんと合計60キロが堤防を水が超えた状態だった、ということを東京理科大学の二瓶先生が解析されました。全長の半分を超えています。

60キロの越水流域というのがどれだけとんでもないかというと、東京駅から平塚(お正月の箱根駅伝の中継所がありますよね)までが63キロです。大阪から西に向かって加古川までが61キロです。それだけの流域が水に浸かり、高いところでは堤防の5メートル上まで水は上がりました。(堤防の高さが住宅地の地面から5メートルなら住宅の浸水高は10メートルになります)平均的な二階建て住宅の屋根のてっぺんが7メートル~9メートルです。二階家が水没するレベルだった可能性があります。

ちなみに、大津から大阪湾までの淀川の長さで75キロです。関西でいえば淀川上流の宇治市あたりから大阪市内の河口までが全部水没したという規模です。球磨川にかかる橋は22脚。そのうち10脚が流されました。ちなみに淀川にかかる橋が24脚です。

住んでいる人の数が少ないだけで、同じ規模の災害は日本中どこで起こってもおかしくない昨今の気候です。今まで住んでいた家が二階まで水没したり、一階の半分までの高さまで家も庭も車も道も土砂で埋まっている。それが自分の家ならどうでしょう。

河口の八代市から、中流部の人吉市までが国道が219号線で40キロです。距離でいえば大阪から須磨です。東京から戸塚です。八代~人吉までの国道40キロと県道100キロを調査したところ、土砂に埋まる、路肩が崩れる、陥没する、流失するなどの被害がなんと約400箇所も確認されたということです。

以前の寄付を届けたオープンジャパンの吉村誠司さんによると、その球磨川沿いに八代から人吉まで最短でいける道が、(地元・緊急・通行証車両のみの)「暫定」付きながらようやく開通したそうです。

発災から40日を超え、まだまだそんなところなのです。全長60キロの越水エリアに、1000人のボランティアが来たとします。60メートルにつき一人がいるぐらいです。また山間部の住宅は水ではなく、土砂で埋まっている家がたくさんあります。重機を使ってもすぐには片付きません。手付かずに近いところも、人の気配がない地域も。

そんな規模なのに、例年にも増して厳しい暑さの中なのに、コロナ禍のせいで県外ボランティアは原則お断りです。私の知り合いでもごく少数の人は2週間だれとも接触しないという時間を作ってからとか、一応の目安としてPCR検査をしてからとかして県外からも入っています。いますが「みなさん、来てください!」とは言えないんです。もちろん私も行けていません。

それがみなさんに寄付支援をお願いした令和二年豪雨球磨川流域のほんの断面です。吉村さんの記事を添付します。写真でもぜひみてみてください。何か建設的な提案とか書きたいのですが、今日は思い浮かびません。

吉村さんfacebook※詳細は右下(f)をクリック

津田啓史 拝